プログラミング教室(d.garten)

時代背景

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉をニュースなどで盛んに目にするようになりました。様々な場面でデジタル技術の利用が推進され、人々の生活をより豊かにしていこうとしています。これまでデジタル技術と関わりがなかった業種でも、突然必要になることがあるでしょう。コロナ禍においてはそのような場面がいたるところでみられています。もちろん、こども園も例外ではありません。

DXの目的は人々の生活を豊かにすることです。これまで大変な思いをしてやってきたことをデジタル技術によって、よりよい方向に変化させるためのものです。しかしながら、デジタル技術に親しみがなければ、心理的ハードルが高くなり、本来便利になるべきことを阻害してしまう可能性があります。(ただの手段であるはずのデジタル技術を導入すること自体が目的となってしまい、不便になるケースや、目的意識が共有されずに作られた不完全なシステムが多いことも原因の一つではあるかと思います)。この心理的ハードルによる阻害は、デジタル技術に親しいIT企業などでも頻繁に発生しています。古い手法に固執し、新しい手法を導入した企業に遅れをとることは往々にしてあります。新しいことに対してポジティブかつ柔軟に取り組むという姿勢は大変重要です。

 

学校教育における変化

教育においても大きな変化を迎えています。学習指導要領が改訂され、小学校では2020年からプログラミング学習が必須となり、2024年には大学入学共通テストにおいて情報科目の導入が検討されています。合わせて、GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想により、小学校では1人1台の学習端末やネットワーク環境の整備が進みました。しかしながら、これまでの紙でやっていたワークをタブレットで実施するだけ、だとデジタル技術を本当に活用できているとはいえません。デジタル技術によりこれまでの画一的な学習ではない個別最適な学びや、多様な他者との協働的な学びを提供できることが求められていますが、この目的に対してどこまで共感して取り組むかの違いにより、地域間、学校間での新たな格差が生じ始めています。変化に対して受け身の姿勢だと遅れをとってしまう可能性があります。

 

教室でこどもたちに身につけてもらいたいこと

これからのこどもたちは今以上にデジタル技術に触れることになります。こどもたちがデジタル技術に触れる際に、嫌悪感なく、親しみをもって触れるようになってほしいです。タイピングやマウス操作などの指導も行いますが、知識や技能面の習得に傾倒するのではなく、様々なデジタル技術に触れ、新しいことに興味を持ち、柔軟に取り組んでいける姿勢を身につけることを重視します。プログラミングやSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)教育に限らず、言語、音楽、植物、生活など様々な内容を組み合わせて、思考力・判断力・表現力が身につくような学習内容を実施いたします。また課題に取り組む際に、1つのやり方だけでなく、いろいろなやり方に触れてもらい、1つの方法にこだわらず、状況に応じてやり方を変えられるようになってもらいたいと考えております。例えば、「お友達に手紙を書く」際に、「えんぴつで紙に文字を書く」というのは1つの手段ではありますが、「パソコンで文字を打つ」、「タブレットでペン入力する」、「音声で文字を入力する」などを色々な方法を体験させ、1つの手段だけにこだわることなく、場面によってどの方法がよいかを考えてもらいます。

 

教室を通して育つ子供の姿 

・様々なことに対して興味を持ち、新しいことに対して楽しく取り組んでいけるような姿勢を身につけている
・友達と一緒に課題に取り組んだり、サポートしたり、ときには競争したりしながら協働的に学べる
・自分なりの論理的な思考、判断、表現ができる
・デジタル機器に慣れ親しみ、大人のサポートを受けながらも操作できるようになる
・デジタル機器を触れるために必要な周辺知識(アルファベット、足し算など)を身につけている

 

 

学習内容・教室の様子

小さなキューブ型ロボットトイ・toio™

パソコンやタブレットを使わないアンプラグドプログラミングが学べるGoGoロボット・プログラミング™や、小学校のプログラミング学習に使われるscratchと同じインターフェースで学べるtoio™ doなど様々な学習が可能な教材です。Koov®などに比べて拡張性は低いですが、その分操作がシンプルで、初めてでも楽しんでプログラミングに取り組むことができます。プログラミングに必要な順序・繰り返し・条件分岐などをかわいいロボットと共に学びます。

タブレット(ipad)

タブレットでお手紙や絵を描いたり、地球について学んだり、こども園の植物について調べてみたり、zoomでお友達と会話したりと様々な場面で活用します。toioでのプログラミングにも使用します。

パソコン

簡単なマウス操作からスタートし、絵やお手紙を書いたり、知りたいことを検索したりします。またオリジナルのタイピングソフトでローマ字入力も体験します。誰が早くクリアできるか競争すると、みんな黙々とタイピングを始めます。toioでのプログラミングにも使用します。

ワーク

タブレットを使用した文字、算数、ちえなどの学習を行います。個々の理解力に応じて学習する内容を変えながら進めます。また紙のワークでプログラミングに必要な考え方を学びます。

身の回りのものから思考力を高める

こどもたちは身の回りのものに対して、色々な疑問を持っています。「お買い物のときになんでピッてやるんだろう?」「虹ってどうしてできるんだろう?」「鳥はなんで電線のうえに立ってビリビリならないんだろう?」などなど。そんな疑問に答えてあげられるようにしたいと考えております。単に言葉で教えるだけでなく、実際に体験しながらなぜそうなるのかを子供なりに理解してもらいます。身の回りのものに興味を持つ芽を育て、将来「こんなのがあったらいいな」「こんな未来を実現したいな」といった考えを持ってそれを実現できるような大人になってほしいと考えています。

使用する教材は随時増やしています。こどもたちが今日は何をやるんだろうとワクワクし、教室で学んだ内容を帰り道やお休みの日に生活の中から発見し、自分なりに考える力を身につけてほしいと考えております。

 

実施内容

対象白組(年長) (※1)
年間実施回数全40回
曜日火曜日、金曜日 (※2)
時間14:30〜15:30, 15:30〜16:30 (※3,※4)
人数1クラス4人程度
月謝6500円 (※5)

※1: 卒園後の継続実施はございません。
※2: ご予定が合わない場合にはご相談ください。他の曜日も検討いたします。
※3: 視力への影響を考慮して、長時間のパソコン等の作業は実施いたしません。
※4: 1号認定の方は、預かり保育料は別途かかります。教室に参加している時間は除外されます。
※5: 3回の月も同額です。

 

プログラミング的思考とは?

大学生や大人向けのパソコン教室やプログラミング教室ではwordやjava scriptなどの使い方を学ぶことが重視されることが多いです。そのイメージで「幼児にプログラミングは早いのでは?」とお考えになるかもしれませんが、幼児を対象としたプログラミング教室は使い方に重きを置くものではありません(もし使い方を重視している教室があればやめておいたほうが良いと思います)。アプリやプログラミング言語は時代の流れとともに変化します。私が初めて触れたプログラミングであるBASICという言語は、今のプログラミング言語の主流ではありません。今はAI開発に適したPythonが人気だったりしますが、子どもたちが大きくなるころには、まったく別の言語が主流になっていると思います。

幼児のプログラミング教室では、学ぶ姿勢や論理的思考力などを身につけることが重視されます。ただ、論理的思考力、プログラミング的思考などとよく言われますが、具体的にどういうものかわかりにくいと思うので、日常での出来事を例に説明させていただきます。

例えば、おうちのテレビが映らなくなったとします。極端ではありますが、論理的思考力がないと、「なんか突然テレビが映らなくなった」「テレビが壊れた」で終わってしまい、電器屋さんに新しいテレビを買いに行きます。論理的な思考が身についていれば、「リモコンでの操作が正しくできるか」「電源ケーブルは入っているか」「アンテナ線は抜けていないか」「主電源のスイッチは入っているか」という具合に、テレビが動かない考えられる理由を細かく分離して1つ1つ検証します。また、可能な限り思い込みも排除して考えることが重要です。「アンテナ線なんて触るわけないから問題ない」と思ってたら、子どもが触って抜いてしまっているかもしれません。

現時点でのプログラムは、コンピュータやロボットにやらせたいことを、1つ1つ整理して漏れなく記述しなければ、正しく動作しません。また、バグの原因を探るときに、細かく分離して検証できなかったり、原因がわからないからと対処療法で問題解決をしようとすると、別の大きなバグを引き起こしてしまう可能性があります。そのため、論理的思考力がプログラミングにおいては非常に重要で、論理的思考力≒プログラミング的思考として取り沙汰されています。プログラミング的思考は日常生活においても、問題解決へのアプローチとして大変役立つスキルの一つです。

幼児のレベルでは、大人からすると間違ったレベルでの思考になるかもしれませんが、子どもなりに、こうかな?ああかな?と考えようとする姿勢が身についていれば、年齢を重ねるにつれて、洗練されていきます。

 

トライアルアンドエラー(試行錯誤)の重要性

世の中の変化のスピードが早くなってきたと言われますが、世界的な人口増加の影響のみならず、物事に対する進め方の主流が変わってきていることが大きな要因となっています。完璧なものができるまで物事を進めない、というのではなく、ある程度不完全なところがあっても、まずはやってみて、問題点を見つけて、修正するサイクルを早めて完成度をあげていく方法が主流となっています。携帯業界ではMade in Chinaなんて粗悪品でしょうといいながら鼻で笑っているうちに、たとえ最初は完成度が低くてもいろいろなものを短時間でリリースして改善していく中国の会社が、高性能で安価なものを作るようになり、シェアをとるようになりました。

デジタルデバイスを使った教育のよいところの1つに、トライアルアンドエラーが容易にできることがあげられます。絵を描くときに、書き損じても、アンドゥボタンですぐにやり直しができます。トライする回数が増えるので、より洗練されていきます。私自身が子供のころは紙に描いて、消しゴムで消してやり直すことをやってきた世代なので、このやり方に違和感を感じる部分もありますが、世の中の変化を見ていると、今の子供たちはこのやり方も身につけていかないと、周りに取り残されてしまう可能性があります。失敗を恐れずに、何度も繰り返しトライすることで、よりよいものを創造できる力はとても重要です。

 

講師紹介

岡野祐太

東京大学大学院新領域創成科学研究科基盤情報学専攻卒。修士(工学)。修士論文で専攻科長賞受賞。2009年からソニーに勤務。半導体事業本部でカメラ用LSIのアルゴリズム開発を行う。2014年からはソニーモバイルコミュニケーションズに転籍し、スマートフォンのカメラアルゴリズムや画質調整などを担当。2020年から荒川こども園の事務長として勤務。2021年からプログラミング教室(d.garten)を開始。香川県出身。